Homma Museum of Art芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館
コラム
古文書の見方①【紙の形】
学芸員:須藤 崇
現在開催中の企画展「知ればこんなにおもしろい こもんじょ入門!」では、古文書(こもんじょ)の文字や内容だけではなく、書き方、紙の形、紙の種類など様々な角度から「古文書の見方」をご紹介しています。
このコラムでは、全4回にわたって古文書の鑑賞ポイントについてわかりやすく解説します。
第1回目は【紙の形】についてです。
【紙の形】に注目!
まず古文書の紙の形に注目して見てみましょう。紙の形には、「竪紙(たてがみ)」「折紙(おりがみ)」「切紙(きりがみ)」(竪切紙(たてきりがみ)、横切紙(よこきりがみ))と呼ばれているものがあります。
竪紙
横長の紙を折ったり切ったりせずに、そのまま使用する紙の形のことです。
■作品例
酒田市指定文化財
《大宝寺義氏書状 鮎川山城守宛》 永禄末頃ヵ4月18日 館蔵
出羽庄内を治めていた大宝寺義氏(1551~83)が、仙北地方(秋田県)由利郡鮎川に居を構えていた鮎川山城守に宛てた書状です。まだ義氏自身が若輩であるため、すべて近臣の土佐林禅棟に任せてあると記しています。
折紙
竪紙を横方向に二つ折りにして折り目を下に向けて使用する紙の形のことです。
本来、書状は本紙に白紙一枚(礼紙)を添えるのが礼儀でしたが、紙は貴重品だったので、本紙を上下二つに横長に折って裏を礼紙の代わりに使うようになったとされます。
■作品例
《徳川家康書状》(宛名欠)(天正7年/1579)7月7日 ※館蔵
徳川家康(1542~1616)が先年の折の御礼と、また鷹師を奥羽(東北)に行かせるので、道中のお世話をお願いしたいという内容が書かれています。宛名は欠損していますが、日付が近く内容が重複する家康の書状があり、その宛名が伊達輝宗の重臣・遠藤基信であることから、この書状の宛名は基信もしくは輝宗の可能性があります。
切紙
竪紙を切って使用する紙の形のことです。
横方向に切って使用する横切紙(二枚以上貼り継いで使用したものを横切継紙という)や、竪紙を縦方向に切断して使用する竪切紙があります。
■作品例
酒田市指定文化財
《最上義光書状 北館大学宛》 (慶長16年/1611)7月2日 館蔵 ※横切継紙
最上義光(1546~1614)が狩川城主・北楯大学利長に宛てた書状です。前日には大石田(山形県大石田町)に着いており、三日には清川(東田川郡庄内町清川)に着くことを北楯大学に伝えています。
■作品例
酒田市指定文化財
永田文書《志村九郎兵衛光惟請取状 永田かん十郎宛》
慶長18年(1613)12月23日 館蔵 ※竪切紙
最上義光の家臣で亀ヶ崎城代の志村光惟(1596~1614)の年貢請取状です。
税金や年貢などの上納を担当していた酒田の豪商・永田勘十郎に対して、最上氏側が発給した証明書(覚書)で、現在の領収書(レシート)といえます。年貢の請け取り証明として光惟の黒印が捺されています。
次回は【紙の種類】について解説します。
2018.01.18
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