公益財団法人 本間美術館は、「公益」の精神を今に伝え、近世の古美術から現代美術、別荘「清遠閣」の緻密な木造建築の美、「鶴舞園」、さらには北前船の残した湊町酒田の歴史まで楽しめる芸術・自然・歴史の融合した別天地。

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Homma Museum of Art芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館

コラム

公益財団法人 本間美術館 [山形県 酒田市] > コラム

【補足解説】《伊勢物語 塗籠本 伝民部卿局筆》について

学芸員:阿部 誠司

4月14日にYouTubeで公開した解説動画《伊勢物語 塗籠本 伝民部卿局筆》について、補足の解説をさせて頂きます。

動画はコチラ→「本間美術館名品選」より、出品作品のご紹介

 

まず、「伊勢物語 塗籠本」とは、平安京の朱雀院における塗籠という書物を保管する場所に収められていた伊勢物語で、平安中期の公卿・高階成忠(高二位と称す)の本であったことから「高二位本」とも呼ばれます。

この「高二位本」を伝える写本が、藤原定家の息女・民部卿局が書き写したとされる本で、
本間美術館の《伊勢物語 塗籠本 伝民部卿局筆》と国文学研究資料館の《不忍文庫本》と《群書類従本》が確認されています。

研究者の間では、3つの写本の中でも本間美術館のものが親本になった可能性が高く、時代的にも民部卿局の頃(鎌倉時代初期)に書き写されたと考えられています。その点では、非常に古い写本で貴重価値が高いことは頷けますね。

 

しかし、「伊勢物語 塗籠本」の研究はまだ途上で、あくまで奥書にある冷泉為清の識語を信じた上での見解です。
他の数ある系統本との照合や本文の研究などから、別の見解や疑問も多く存在します。「塗籠本」が伊勢物語のオリジナルに近いという説も、近年は疑問視されるようになりました。

 

すでにオリジナルも無く、作者も主人公も分からない。しかし、千年もの間、写し読み継がれる物語。
その存在そのものにミステリアスな魅力を感じるこの作品は、多くの芸術家に影響を与えてきました。
皆さんも、この機会に一度読んでみてはいかがでしょうか。

 

 

2020.04.20