Homma Museum of Art芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館
コラム
清遠閣の隠れた見どころ三選
学芸員:阿部 誠司
本間美術館は4月7日から、新型コロナウイルス感染拡大防止のため臨時休館をしておりますが、
このコラムでは、4月12日からの展覧会『国指定名勝庭園「鶴舞園」と本間美術館名品選』で皆さんのご覧いただくはずだった展示内容のご紹介します。
【清遠閣の隠れた見どころ三選】
国指定名勝庭園「鶴舞園」の中にある清遠閣には、よく見なければ分からない、また説明を受けなければ気づかないような所にも見どころがあります。そんな隠れた見どころから三つをご紹介します。
◆日本建築の粋、釘隠し!
釘隠しとは、日本建築において長押などに打った釘の頭を隠すために付けられた装飾を言い、その材質や形は多種多様です。
清遠閣では、江戸時代に築造された一階部分で見ることができます。
特に本間家の裏紋を表した「竜胆車(りんどうぐるま)」の釘隠しは、本間家の本邸にも使われています。
その他にも、葵を表したものや七宝焼をあしらったものなど、場所や部屋によって違った意匠の釘隠しがあります。
◆梅の欄間…の影!
清遠閣の二階へ上がる階段には、欅(けやき)の一枚板をくりぬいて造られた見事な梅の欄間があります。
大正14年10月14日の東宮殿下(昭和天皇)のご宿泊に合わせて設えたもので、酒田の隣町の遊佐町で仏師をする高橋為吉のもとで製作されました。
為吉は酒田でも多くの仕事をしており、本間家とも関りがあったと言います。(欄間の下絵は、伊勢神宮に関係する人物が描いたと伝わっています。)
欄間は階段を昇る時も降りる時にも美しく見えるよう、両面に梅の花が彫られています。
硬い欅の板で繊細な梅の花や生き生きとした枝ぶりを表現することは難しく、梅の花一輪を彫るのにも、一日かそれ以上かかると言われています。
この欄間の面白いところは、壁に映った梅の花の影が鶯(うぐいす)のように見えるという点です。
欄間に関する資料は残っていないので故意か偶然かは分かりませんが、「梅に鶯」とは「とても良い取り合わせ」「仲の良い間柄」という意味があり、古くから皇室を敬ってきた本間家らしい意匠と言えるかもかもしれせん。
◆壁一面に輝く金の雲「浮雲」!
清遠閣二階の壁面には壁紙が貼られており、大きな面には金粉の吹き付けによる雲が表されています。
この金雲には、外光や目線の位置によって、その姿が薄くなったり消えたりする仕掛けがあり「浮雲」と呼ばれています。
二階の部屋へ足を踏み入れた時には全く気づきませんが、窓側から部屋を一望すると、金色に輝く浮雲を見ることができます。
いかがでしたでしょうか。清遠閣は江戸時代には藩主を、明治以降は皇室や政府高官をもてなしてきた建物です。
内部を見学する際には、細部にまでこだわった「おもてなしの心」を感じて下さい。
2020.04.17
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