Homma Museum of Art芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館
コラム
酒田における横山大観の足跡
学芸員:須藤 崇
明治から昭和にかけて日本の画壇を牽引した、近代日本画の巨匠・横山大観(1868~1958)。
酒田とはなじみがないと思われる方も多いと思いますが、実は二回も酒田に来遊していたことが遺された資料によって確認できます。
一回目は、大正15年(1926)10月7日です。『酒田市史年表 改訂版』(1988年)によれば「十月七日画家横山大観が来遊する。自動車で市内一巡、小幡(料亭)の歓迎会に臨み即日帰る。」とあります。この来遊を裏付ける資料の一つとして、酒田を訪れた記念に描いた「大正丙寅羽後探勝紀念 大観㊞」の落款がある《鳥海山図》(個人蔵)があります。
本図は、大観と酒田との関わりを示す貴重な作品として、現在は酒田市の指定文化財となっています。
二回目は、昭和2年(1927)10月です。これを裏付ける資料として一枚の写真《日本美術院総師 画聖 横山大観先生》(個人蔵)が遺されています。写真の裏書によれば、大観は鮭網見物後に、捕れた鮭を料理し、土手にて酒宴を催したとあり、この写真はまさに酒宴中に撮られたものです。
左から2人目が横山大観、7人目が弟子の大智勝観。
酒宴後、大観は酒田の渡辺ホテルに一泊して一緒に来た仲間たちと写生を行い、翌日の午後には酒田駅から新潟方面に行き、その夜には温海温泉(鶴岡市)に宿泊したとも書かれています。
この2回目の来遊についてはほとんど周知されていないようで、翌年の同じ月にまた酒田に来遊したということは、一回目の来遊で酒田の町を大変気に入ったのではないかと思われます。
現在開催中の企画展「日本画の新時代―革新と伝統―」(12/21まで)では、上記の《鳥海山図》(32年ぶりに展示)と写真(パネルで展示)がご覧いただけます。この機会に酒田における横山大観の足跡を多くの方に知っていただければと思います。
2018.11.19
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