Homma Museum of Art芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館
コラム
酒田・海向寺に伝わる十二善神像
学芸員:阿部 誠司
開催中の展覧会「祈りの芸術」より、酒田・海向寺に伝わる≪十二善神像≫をご紹介します。
海向寺は1200年前に真言宗の開祖・弘法大師空海によって開かれたと伝えられ、江戸時代より出羽三山の湯殿山信仰の拠点として人々の祈りを支えています。
現在も湯殿山法楽を伝承し、全国で唯一、2体の即身仏を奉っています。
密教の護法善神「十二天」
箱書きに「十二善神像」と伝わる本図は、護法善神(仏法や仏教徒を守護する神)である天部の十二尊「十二天」を描いたもので、密教において四天王と同じく重視されます。
十二天は、八方(東西南北の四方と東北・南東・北西・西南)を護る八方天に、天地の二天と日月の二天を加えています。
向かって左幅には、(右上から時計周りに)
地天(じてん)(地) 、風天(ふうてん)(北西)、水天(すいてん)(西)、
月天(がってん)(月)、毘沙門天(びしゃもんてん)(北)、羅刹天(らせつてん)(西南) が描かれ、
向かって右幅には、(右上から時計周りに)
日天(にってん)(日)、伊舎那天(いざなてん)(東北)、焔摩天(えんまてん)(南)
梵天(ぼんてん)(天)、帝釈天(たいしゃくてん)(東)、 火天(かてん)(南東) が描かれています。
仏教流布以前の古代インド神話やバラモン教の神々が取り込まれており、多面多臂(顔や手の数が多い)の異形の姿が印象的です。また、背景を描かず塗りつぶしている点も密教絵画の特徴と言えます。
十二天と言えば、京都国立博物館で所蔵する国宝の≪十二天像≫があります。
こちらは平安時代に描かれた12幅からなるもので、綿密な描写と芳醇な色彩による濃厚な装飾美が特徴です。
海向寺の十二天像は、江戸期になった簡略された図像で、当時の形式化の一つを表しています。
2016.07.21
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