Homma Museum of Art芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館
コラム
本間美術館の茶道具
館長:田中 章夫
酒田を含む庄内地方を領有した譜代大名の庄内藩酒井家と本間家の関係は、本間家初代原光より始まっています。天保国替騒動、印旛沼普請、戊辰戦争など、歴代にわたって本間家は酒井家と苦難を共にし、一体となって歩んできました。
そして両家の親交と共に、本間美術館には酒井家伝来の拝領品が多く伝わっています。
本間美術館の収蔵品はおよそ2600件にのぼり、東洋古美術から現代美術まで美術工芸全般に及んでいます。
その中で茶の湯関連の美術品は約200点。多くは本間家より寄贈されたものです。
ここで当館の代表的な作品を何点か見てみましょう。
まず、代表的な掛物として、中国南宋禅林の高僧・無準師範が道契に宛てた手紙「無準師範墨蹟 尺牘」(南宋時代 13世紀)が挙げられます。
これは文意や筆蹟から師範晩年の墨蹟と考えられており、当地の茶会で珍重された一幅です。
「唐物茄子茶入 銘七夕」(南宋時代 13世紀)は、小ぶりで総体に艶のない黒釉がかかり、一条のなだれが裾の露胎までおよび、変化のある景色を見せます。
銘の由来は不明ですが、小堀遠州の三男・権十郎(篷雪)の命銘であると思われます。
水指の「安南染付龍虎文水指」(ベトナム 17世紀)は、龍と虎、雲の文様が描かれ、張付耳にはトカゲとネズミのような小獣が表されています。
また茶碗では、高台から口縁まで直線に近い姿で開いた気品のある朝顔型の「高麗青磁象嵌平茶碗」(高麗時代 14世紀)が挙げられます。
全体に灰色を帯びた青磁釉がかかり、白土・黒土象嵌で雲鶴と草花入丸文、その下には唐草文が施されています。
青磁釉と象嵌が調和し、清楚で、全体に現れる貫入も侘びた風情を添えています。
酒井家より本間家に伝来し、同家では貴人の接待に用いられていました。
以上、紹介しました作品は、開催中の企画展「市中山居の茶ー唐物・高麗物・和物ー」でご覧いただけます。
※本文は、月刊茶道誌『淡交』平成25年6月号の原稿を編集しています。
2016.06.03
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